こんにちは、ベスト相続相談協会の税理士の岩佐孝彦@神戸です。
近年は、被相続人&相続人とも高齢の【老老相続】。
互いに認知症の【認認相続】。
こんなことも言われるようになりました。
語呂はよいかもしれませんが、大変深刻な問題です。
特に認知症の人が残した遺言書を巡り、トラブルも多発しています。
遺言は15歳以上なら作ることができますが、認知症などで作る能力がない
人が作ったとみなされた場合は無効とされます。
2つの判決を紹介しましょう。
1つ目は京都地裁の判例です。92歳で亡くなった呉服店経営の女性がこんな
自筆証書遺言を残しました。
「私のいさん、弁ご士、〇〇にいぞうします」
〇〇とは、この女性が法律相談をしてきた弁護士の名前で、預貯金や会社の株式など
を遺贈する内容でした。
親族の女性は、この遺言の無効確認を求める訴訟を起こす。
その結果、京都地裁は無効と判断。その根拠としたのは、病院でのMRI検査の結果や
医師の診断内容、要介護認定のための市の訪問調査の記録、在宅介護の記録など。
判決を不服として弁護士側が控訴。大阪高裁判決は、弁護士が判断応力が低下していた
女性からの信頼を利用して、自分の利益を図ったとして遺言を無効としました。
2つめは、高知地裁の判例です。
90代の女性が親族Aに全財産を遺贈する公正証書遺言書を作りました。
親族Bらは無効を求めて提訴。
その結果、高知地裁判決は、女性に遺言能力がなかったとして無効となりました。
判決の決め手は、親族B側が女性の財産管理のため成年後見開始を申し立てた際の
書類など。
遺言の日付の約1ヶ月前に作成された医師の精神鑑定書で「アルツハイマー型認知症で
程度は中等度以上」「財産を管理・処分する能力はない」と鑑定していた事実。
親族Aは判決を不服として控訴しましたが、高松高裁判決も地裁判決を相当と認めました。
遺言を作る能力とは、自らの財産を処分する意味が分かり、
その結果を予測でき、自分で意思を第三者に伝えることのできる能力をいいます。
老老相続や認認相続にならないように、早めに手を打っておきたいところ。
相続を争族ではなく、爽族にするために今から前倒しで行動しましょう!
Comment feed